誇りある全日本居合道連盟

昭和32年1月26日

会員各位  

全日本居合道連盟理事長

河野百錬

 

 既に会員諸士のご承知のごとく、昨春、全剣連側の希望による(全剣連副会長N氏が本総会に臨席し、全剣連副会長の資格において団体加入を提案した)団体加入の件は全剣連自らの拒否するところとなり、無謀にも全剣連側は、審査体勢不整のまま、しかも、全居連発行の再審査を強行したが、わが連盟は、これに関知するところ無く、創立当時の方針を堅持して運営中のところ、昨年11月19日、本連盟事務局長G氏が東京における全剣連会議において(G氏は本連盟とは無関係に全剣連評議員代行資格をもって出席)本連盟の現状 とその方針を説明するところあり、降りて11月24日、大阪市体育館において、全剣連理事長S氏・同事務局長W氏と本連盟事務局長G氏

並びに近畿居連事務局長I氏の4氏会合懇談あり、その際、右全剣側両氏の希望として昭和32年1月13日に東京精養軒において開かれる全剣連会議で、一本化の協議を全居連側と

したいから全居連幹部多数出席ありたしとの申出あり、全居側のG・I両氏は、これを了承した。

よって、本連盟は、幹部代表としてO副会長東上、1月13日、右会場に臨みたるところ、全剣連のS・W両氏は「全居連幹部との会見を約したる覚え無し。既に全剣連は、居合道

部を構成済みでもあり、河野氏の何かの間違いならん」との口実の下に、会見を拒否した。

顧みるに、元来、本全居連の創立は、当時、全剣連がスポーツの立前上、真剣をもってする居合は包含不可能との見解に基づき、全国の同志をもって組織された団体で、その後、全剣連の意見の変革により、全剣連側の要望にて、昨春、団体加入の件、今また審査一本化の幹部との

協議の提案あり、その都度、本連盟は、大乗的見地に立って協調の意志をもって、彼の要請を容れ、道の普及及び発展に寄与せんとしたるにもかかわらず、全剣連は、事を構えて再度自らの提案を覆し、会見をも拒否するがごとき今回の挙は、武道家として、その無節義にただただ驚嘆のほかなく、また、道のため洵に寒心慨嘆に堪えぬところで、断じて吾人の許さざるところである。

全剣連が、かくのごとき意向である以上、もはや剣・居の合流の問題に

対しては、全居連としては、考慮を払う余地いささかも無く、創立の初方針に則り、ただ居合道のため強力に邁進するのほか取るべき道なく、

会員諸士は、この経過と実情を十分に御了解の上、本連盟のため、ますます御活躍を願い、道の護持発展のため御尽力を願うて止まぬ次第である。

なお、本連盟会員800名中、全剣居合道部設立のため正式脱退届受理の者は、九州大阪地区の5氏のみで他の総員と共に来たる5月大会並びに審査会を着々準備中につき、併せて御了承を御願い申し上げます。

 

◎ 昨年11月19日、全剣連評議員

会議事録にG氏発言として、『河野氏は、今回、全居連理事長を辞任して、これまでの行きがかりを精算して、進んで全剣連に入ることを表明した。

しかし、全居連は、未だ解消しないで固執しているが、河野氏が理事長を辞することによって、自然解消して全剣連と一つになると思う。

河野氏からも、このことを

東京で表明してくれと言われた』と記録してあるが、私(河野)は、全日本居合道連盟が存続する限り、また、会員諸士全般の支持ある限り、

私は、道のために右G氏発言のごとき軽率な言動は、絶対に不可能な立場であり、右は、私の全く関知せぬ

ところである。

また、本連盟事務局長であるG氏が、かくのごとき不可解な発言をしたとは私は信じられない。

しかしながら、右発言が記録のような事実だったとすれば、このような二兎を追うごとき誤解を受ける流言が表明されたことは、私として洵に遺憾至極なことである。

私は、道のためには終始公正無私、常に、同志と共に生死を共にする覚悟に一点の曇り無い心念であることを、ここに併せて表明します。」

 

🟫全日本剣道連盟居合道部とは

今日様々なかたちで伝承される居合であるが、なぜ全剣連という剣道競技組織内に居合道部があるのか。そもそも、全剣連という組織は1952年(昭和二十七)に誕生した剣道の全国統括組織である。居合道部の設置は1956年(昭和三十一)で、1954年(昭和二十九)に居合の全国組織として誕生した全日本居合道連盟から、一部の人々が異動する形で居合道部が設置された。

 

🟢日本最古の居合道専門団体🟢

🟥誇りある「全日本居合道連盟 」🟥

 河野百錬師範が、前回の会員各位への通知後に行った声明。

「 会員各位に声明 」

◎(一)全日本居合道連盟は、独立的立場を堅持し、自主運営もって居合道振興のため邁進する。

昨春、全日本剣道連盟より、合体の内交渉あり、全日本居合道連盟は、

大乗的見地よりこれに同意したるも、全剣連自ら内交渉において、

全日居連に対し提示したる合体条件を破棄するの挙に出でたるため、

全日居連は、合体交渉を打ち切り、

従前どおり、居合道の本質に基づき、独立自営の線を堅持することに、5月4日の京都における総会において決定しましたが、再び全剣連より提案せる本連盟幹部と1月13日会見の件も別紙経過のごとく全剣連の

拒否するところとなりました。

 

元来、居合道は、それ自体独立した武道なるをもって、全日居連の存在は、弓道連盟、薙刀連盟の存在と同じ立場に立つもので、これを否し、全剣連に従属せしめんとする必要はありません。

全日居連は、居合専門家の綜合団体として、同志相寄り、最も民主的な運営をもって斬道の発展に努力せん

とするものであり、会員が何らの差別なく、平等の立場において、演武研究することのできる唯一の居合専門団体としての全日居連の存在は、

非常に有意義のものと信じます。

この見地に基づき、全日居連は、強固なる独立組織をもって、本然の使命達成に邁進する覚悟であります。

しかしながら、私どもは、決して排他独善的な考えを持つものではく、

剣道、柔道、弓道等あらゆる武道諸団体と緊密な連絡を保ち、協力的な立場をもって武道全般の発展に貢献したいと存じます。

 

 ◎(二)全日本居合道連盟は、従前どおり段位称号の審査を居合道独自の立場より行い、その権威の保持に努める。

居合が断じて他の武道の従属物でないことは、居合の歴史が実証しております。

すなわち、英信流、伯耆流等、居合諸流は、各自独立の体系を伝来して

おり、これを剣道家または柔術家が兼修し、後世、自分の流儀に取り入れたというのが実相であり、決て、剣道または柔道等の一種目または従属物ではありません。

したがって、居合の段位称号は、全国唯一の居合専門団体たる全日本居合道連盟より允許するのが、一番正しい行方であり、また、最も権威あるものと言わなくてはなりません。

 

全日居連は、一流一派に偏せず、最も公平なる立場において審査を実施し、柔道における講道館のごとく、

全国居合道の最高権威として、段位称号の授与にあたり、その権威の保持に努める考えであり、他のいかなる権力にも屈服しない厳然たる存在であります。

他の団体の発行する居合段位称号に関しては、全日本居合道連盟の資格審査規定に明記してありますので、ここに再言しませんが、全日本居合道連盟の段位称号は、居合道の専門的立場より允許したものであり、

絶対の権威を持つものなることを宣言いたします。

 

◎(三)全日本居合道連盟は、従前どおり毎年5月、京都において全国居合道大会を行うほか、連盟規約所定の諸事業を強力に遂行する。

全日本居合道連盟は、全剣連との合体交渉打ち切りを機会として、さらに組織を強化拡大し、事業の遂行に万全を期することになった。

特に、京都大会は、専門家同志の大会として何らの束縛圧制もなく、最も民主的に運営され、全会員は、相互平等に和気洋々の間に、演武研究の便を得られるのと、全国会員の意志疎通の機会を得られるの点において、非常に有効なので、益々盛大

にする考えである。

 

その他諸般の事業は、勿論のこと、全国各支部における諸事業に対しても、積極的な援助をなし、もって、

居合道発展のため、最善の努力を傾注する覚悟である。

昨春来、全剣連との合体経過をめぐって色々の流説や策謀が行われ、会員諸氏並びに関係各位において、全日本居合道連盟の立場について御迷いの点もあるかと存じますから、ここに再び全日本居合道連盟としての不動の所信を明らかにし、各位の御了解と御後援を願う次第であります。

なお、先般、全剣連合流のためと称し、解散をなしたる九州居合道連盟は、今般、改めて同志を糾合して、近く新たに全九州居合道連盟を結合し、全日居連の一翼として活動することになりました。この段、特に皆様に御報告申し上げます。

  昭和32年1月28日

  全日本居合道連

  理事長 河野百錬